近年、ビジネスの世界において「コンサルティング」という機能がかつてないほど浸透しています。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術による業務やビジネスモデルの変革)推進や、複雑化する経営課題の解決において、外部の専門家の力は必要不可欠なものとなりました。それに伴い、組織に属さず個人で活動する「フリーコンサルタント」も急増しており、新しい働き方として注目を集めています。
しかし、コンサルタントの数が増え、市場規模が拡大する一方で、「コンサル栄えて国滅ぶ」という言葉が注目を浴びております。
コンサルタントが高額な報酬を得て羽振りを良くしている一方で、支援先である企業の現場は疲弊し、実質的な成果が出ていない。ひいては、それが国家全体の競争力低下につながっているのではないか。そのような警鐘を鳴らすこの言葉は、私たちコンサルタントにとって、決して無視できない重みを持っています。
本記事では、なぜこのような批判が生まれるのか、その構造的な背景を解き明かすとともに、批判を乗り越え、クライアント(顧客企業)と共に繁栄する「真のプロフェッショナル」になるための道筋を提示します。
なぜ「コンサル栄えて国滅ぶ」と言われるのか?
「コンサル栄えて国滅ぶ」という言葉は、某本のキャッチフレーズとして話題となり、さまざまな経済評論家がコンサルティング業界の功罪を論じる際に用いられてきたフレーズです。この言葉が指し示すのは、コンサルタント自身の繁栄と、クライアントの衰退が同時進行してしまうという皮肉なパラドックス(逆説)です。
なぜ、企業を助けるはずの存在が、逆に企業を弱体化させると言われてしまうのでしょうか。そこには、コンサルティングというビジネスモデルが抱える構造的な課題と、一部のコンサルタントの姿勢に対する根深い不信感があります。
高額すぎるフィーへの不信感
コンサルティングに対する批判の筆頭に挙げられるのが、その報酬の高さです。 大手コンサルティングファームに依頼する場合、コンサルタント1人あたり月額200万円から500万円、プロジェクト全体では数千万円から数億円という巨額のフィー(報酬)が発生します。フリーコンサルタントの場合でも、月額150万円前後の報酬は一般的であり、これは一般的な会社員の月収を遥かに上回ります。
費用対効果への疑問
問題は金額そのものではなく、「その対価に見合う成果が出ているのか」という点です。 もし、数千万円の投資で数億円の利益が生まれたなら、誰も文句は言いません。しかし、実際には以下のようなケースが散見されます。
- 立派な戦略資料は納品されたが、現場では誰も使っていない
- システム導入プロジェクトが炎上し、追加費用ばかりがかさむ
- コンサルタントが常駐している間は回るが、いなくなった途端に業務が停止する
このように、高額なコストを支払っているにもかかわらず、企業の自走力が失われたり、実質的な利益に繋がらなかったりする場合、「コンサルタントだけが企業の予算を吸い上げて肥え太っている」と見なされても仕方ありません。特に、実働部隊である現場社員の給与が上がらない中で、外部のコンサルタントにだけ高額な報酬が支払われる状況は、現場のモチベーションを著しく低下させる要因となります。
責任を取らない「提言して終わり」の姿勢
もう一つの大きな要因は、コンサルタントの「立ち位置」に関する問題です。 伝統的な戦略コンサルティングのスタイルは、外部の客観的な視点から分析を行い、経営陣に対して「提言(アドバイス)」を行うことに主眼が置かれていました。しかし、この「言うだけ」の姿勢が、現場からの猛反発を招く原因となっています。
「実行」の壁
きれいなパワーポイントの資料で描かれた戦略は、論理的には正しくても、現場のリソース(人・モノ・金)や感情的な抵抗を考慮していないことが多々あります。「こうすれば儲かります」と提案するのは簡単ですが、それを実行するのはクライアント企業の社員です。
- 実行の難易度を無視した理想論を押し付ける
- うまくいかなかった場合、「実行した現場の能力不足」として片付ける
- 結果が出る前に契約期間が終了し、責任を負わずに去っていく
このような態度は、「無責任な評論家」あるいは「高級な文房具」と揶揄される原因となります。結果に責任を持たず、リスクを取らない安全地帯から指図するだけの存在が、企業を真の意味で強くすることはできません。こうした積み重ねが、「コンサルタントに頼ると企業がおかしくなる」という不信感を醸成しているのです。
批判を乗り越え、真に信頼される存在になる
しかし、これらはあくまで「悪しきコンサルタント」の例です。フリーコンサルタントとして独立した私たちは、組織の論理に縛られることなく、クライアントにとって本当に必要な支援を追求できる立場にあります。 「コンサル栄えて国滅ぶ」という言葉を、自らへの戒めとして受け止め、「コンサルも栄え、クライアントも栄える」という好循環を生み出すことこそが、私たちが目指すべきゴールです。
「自分だけ栄える」コンサルの悲しい末路
フリーコンサルタント市場は現在、活況を呈しています。需要が供給を上回っているため、スキルさえあれば比較的高単価な案件を獲得しやすい状況にあります。しかし、このバブルのような状況に甘え、「自分だけ栄えればいい」という考えで仕事をしていると、遠くない未来に必ずしっぺ返しを食らうことになります。
短期的には稼げても、長期的には市場から淘汰されてしまうコンサルタントには、明確な特徴と悲しい末路が待っています。
顧客から「あの人は口だけ」と見抜かれる日
クライアント、特に現場の社員たちは、外部から来たコンサルタントの能力や姿勢を冷徹に見ています。かつてのように「コンサルタント=先生」として無条件に崇められる時代は終わりました。今はクライアント側にもコンサルティングファーム出身者が在籍していたり、インターネットで高度なビジネス知識にアクセスできたりするため、情報の非対称性(知識量の格差)は縮まっています。
メッキが剥がれる瞬間
以下のような振る舞いは、即座に「偽物」として見抜かれます。
- 借り物のフレームワークの乱用: どんな課題に対しても、教科書通りの3C分析(市場・競合・自社)やSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)を当てはめるだけで、独自の洞察がない。
- 専門用語の羅列: 「アジャイル(俊敏な開発手法)」「シナジー(相乗効果)」「パラダイムシフト(劇的な変化)」などのカタカナ語を多用して煙に巻こうとするが、中身が空っぽである。
- 上から目線の評論: 現場の苦労を知ろうとせず、「なぜこんなこともできていないのですか?」と批判ばかりする。
一度「あの人は口だけで、手は動かさない」というレッテルを貼られると、現場からの協力は得られなくなります。情報が入ってこなくなり、正しい分析ができず、的外れな提案を繰り返すという悪循環に陥ります。そして最終的には、契約更新のタイミングで静かに切られることになります。
案件が途切れ、高単価を維持できなくなる
フリーコンサルタントにとって最大の資産は「信用」です。 優秀なフリーコンサルタントは、営業活動をしなくても仕事が途切れません。なぜなら、過去のクライアントからのリピート発注や、「あの人は素晴らしい」というリファラル(紹介)によって、次々と案件が舞い込んでくるからです。
一方で、「自分だけ栄える」タイプのコンサルタントには、紹介が生まれません。「契約期間だけいてくれればいい」「もう二度と頼みたくない」と思われているからです。
市場価値の暴落
紹介がない場合、常にエージェント頼みで新規案件を探さなければなりません。しかし、エージェント側もクライアントからの評判(フィードバック)をデータベース化しています。「成果が出ない」「現場とトラブルになる」という評判が蓄積されれば、優良な高単価案件は紹介されなくなります。
結果として、誰もやりたがらない難易度の低い案件や、単価の低い案件しか回ってこなくなります。あるいは、単価を下げて自分を安売りするしかなくなります。
- 収入の不安定化
- スキルの陳腐化(レベルの低い案件では成長できない)
- キャリアの行き詰まり
これが、「顧客の成功」よりも「自分の報酬」を優先したコンサルタントが辿る末路です。市場は残酷なまでに正直であり、価値を提供しない者には対価を支払いません。
「クライアントを栄えさせる」コンサルはここが違う
では、厳しい批判を乗り越え、長く活躍し続ける「本物」のフリーコンサルタントは、どのようなスタンスで仕事をしているのでしょうか。彼らは一様に、「クライアントを栄えさせること」を最優先事項としています。その具体的な行動様式には、いくつかの共通点があります。
現場に深く入り込み、共に汗をかく
「本物」のコンサルタントは、会議室にこもってパソコンを叩いているだけではありません。彼らは現場を何よりも重視します。 製造業の工場であれ、小売店の店舗であれ、システム開発の現場であれ、問題が起きている場所に自ら足を運び、一次情報(人から聞いた話ではなく、自分で直接見聞きした情報)を収集します。
ハンズオン支援の価値
単に指示を出すだけでなく、クライアントの社員と一緒になってデータを集めたり、顧客へのインタビューを行ったり、時には泥臭い作業も厭わず代行したりします。「外部の先生」ではなく「頼れるパートナー」として、チームの一員になるのです。
「ここまでやってくれるのか」という感動と信頼があって初めて、現場はコンサルタントの提案に耳を傾けてくれます。共感と信頼に基づいた変革こそが、持続的な成果を生み出す唯一の方法であることを、彼らは知っているのです。
「絵を描く」だけでなく「実行」まで伴走する
「あるべき姿(To-Be)」を描くことはコンサルタントの重要な仕事ですが、それだけでは価値は半分以下です。描いた絵を「現実のもの(As-Isからの変革)」にすることこそが、真の価値提供です。
デリバリーへのこだわり
優れたフリーコンサルタントは、戦略策定の段階から「実行可能性(フィージビリティ)」を徹底的に検証します。
- 現場のリソースで本当に回せるか?
- システム的に実装可能か?
- 現場の抵抗をどう乗り越えるか?
そして、計画を実行に移すフェーズにおいても、PMOとして伴走を続けます。進捗が遅れればボトルネックを取り除き、問題が起きれば矢面に立って解決に奔走します。 「言いっ放し」にせず、「結果が出るまで逃げない」という姿勢が、クライアント企業に成功体験をもたらし、自走力を育みます。
契約形態に関わらず「成果」にコミットする姿勢
フリーコンサルタントの契約は、基本的に稼働時間や期間に対して報酬が支払われる形式(準委任契約など)が一般的です。しかし、だからといって「時間さえ費やせばいい」「言われた作業だけやればいい」というスタンスでは、高単価なプロフェッショナルとして評価されません。 重要なのは、報酬形態に関係なく「クライアントのビジネス成功にコミットする」という当事者意識です。 「自分はこのプロジェクトを成功させるために雇われている」という気概を持ち、期待値を超える価値を提供しようとする姿勢こそが、クライアントからの深い信頼を勝ち取り、契約の更新やリピート発注へとつながる最大の要因となります。
明日からできる「価値創造」3つのアクションプラン
「クライアントを栄えさせるコンサルタント」になるために、特別な才能は必要ありません。必要なのは、日々の行動と思考の習慣を変えることだけです。 これからフリーコンサルタントとして活動する方、あるいは現在の働き方を見直したい方に向けて、明日からすぐに実践できる3つのアクションプランを提案します。
1. クライアントの「成果」に徹底的にコミットし、実行を伴走する
クライアントの「成果」に徹底的にコミットし、実行を伴走する
単なる「提案」で終わらせない: 計画作成だけでなく、クライアントが実際にアクションを起こすところまで入り込み、進捗を定期的に管理し、障壁があればすぐに軌道修正を促す「共闘」の姿勢で伴走する。
具体的な数値目標の設定と検証: 目標を具体的な数値で提示し、その成果をクライアント自身が語れる状態を作る。成果が出たかどうかを客観的に認識し合うことが、信頼と継続につながる。
「少し先の未来予測」と準備: 次の会議で何が論点になり、クライアントが何を求めてくるかを事前に読み解き、先回りして準備することで、質の高いアウトプットとスピーディーな対応力を実現する。
2. クライアントの視点・感情に寄り添い、信頼関係を深く構築する
徹底的な傾聴と共感: クライアントの要望をしっかりと聞くことが大前提。その立場や視点を深く理解しようと努め、「過度な関与のない共感」で専門的な境界線を保ちつつ、信頼と親密さを築く。
Talk Straightなコミュニケーション: クライアントに嫌われることを恐れず、遅れや問題点など、耳の痛い事実も意見として正直に伝える「Talk Straight」な姿勢が、結果としてクライアントの成果につながる。
自己志向性を排除する: 自分の利益よりもクライアントの利益を優先することが、信頼構築の核心。クライアントファーストの想いが、行動と評価に変わる。
3. 独自のストーリーと信念で「独自化」を確立する(=比較対象外になる)
アクション 3-1
支援対象を絞り込み、「誰の、どんな課題」に特化するかを定義する
「深堀りのテーマ」を決める: 業界や機能だけでなく、「企業のフェーズ」「経営者の属性」「抱える文化的な問題」など、ニッチな要素を掛け合わせて専門領域を定義する。
「選ばれる理由」を明確化: なぜそのニッチな課題をあなたが解決できるのか、過去の経験やスキルセットを棚卸し、「その分野では右に出る者がいない」と言える専門性を追求する。
アクション 3-2
パーソナルな「信念とストーリー」で共感を生む
「仕事の動機」を言語化: なぜこの仕事をしているのか、過去の成功・失敗・感動体験を結びつけ、「志」として言語化する。
すべてのコミュニケーションに含める: 提案書や初回ミーティングなど、あらゆる機会でこの「信念とストーリー」を伝える。これが、あなたを比較対象外の存在にする「物語」となる。
アクション 3-3
クライアントに「実感」を与えるフィードバックを行う
成果を「言葉」で示す: 数字の報告だけでなく、「あの時の決断が大きな転機になりましたね」「社員の方々の目の色が変わってきましたね」といった、変化を実感できる言葉を伝える。
クライアントに成果を語らせる: 課題がどう変化したかをクライアント自身に問いかけ、自分の言葉で成果を認識・宣言できる状態を導く。
「栄えて栄えさせる」コンサルタントへ
「コンサル栄えて国滅ぶ」という言葉は、私たちコンサルタントに対する社会からの厳しい警告です。しかし、裏を返せば、それだけコンサルタントという存在が社会に与える影響力が大きいということでもあります。
フリーコンサルは社会を良くする力を持つ
日本企業は今、生産性の低さやデジタル化の遅れなど、多くの課題に直面しています。これらの課題を解決し、企業の競争力を取り戻すためには、高度な専門知識と実行力を持つプロフェッショナルの力が不可欠です。 組織の枠を超えて、必要な場所に知見を流通させるフリーコンサルタントは、日本経済を活性化させるための「血液」のような存在になり得ます。
私たちが、一つひとつの案件で誠実に価値を出し、クライアント企業を元気にすることができれば、それはやがて業界全体の信頼回復につながり、ひいては国全体の活力につながっていくはずです。
自分の仕事が未来を創ると信じること
PCの画面上で数字を操作することだけが仕事ではありません。その数字の向こう側には、働く人々の生活があり、企業の未来があります。 自分の提案一つで、現場の負担が減り、社員の笑顔が増え、新しい事業が生まれ、社会に価値が届く。そんなダイナミックな変化を生み出せるのが、コンサルタントという仕事の醍醐味です。
まずは目の前のクライアントに誰よりも誠実であれ
壮大な話をする必要はありません。まずは、今目の前にいるクライアントに対し、誰よりも誠実に向き合うことから始めましょう。 報酬分以上の価値を返す。嘘をつかない。逃げない。 そんな当たり前のプロフェッショナリズムの積み重ねが、「コンサルも栄え、国も栄える」未来を創ります。
あなたのスキルと情熱が、正しい方向で発揮され、多くの企業を、そしてあなた自身を豊かにすることを願っています。自信を持って、誇り高きフリーコンサルタントとしての道を歩んでください。 Luxe FreeConsultのような信頼できるパートナーと共に、価値ある仕事を追求していきましょう。あなたが「本物」であれば、未来は必ず明るいはずです。
フリーコンサルに興味がある方、ぜひ一度 Luxe FreeConsultにご相談ください。



